CLASSY HOUSE STYLE vol.10

人の心に寄り添う器 それが深川製磁の真髄 磁器の生産地として名高い佐賀県・有田町。さまざまな窯元が軒を連ねるこの町で、120年の歴史を刻む老舗が「深川製磁」です。創業時から貿易で培った技術と感覚を今日も器づくりに活かす、深川製磁デザイナーの深川惠以子さんにお話をうかがいます。

1350度の火で完成するフカガワスタイル

1350度の火で完成するフカガワスタイル

深川製磁は、高品質の天草陶石を原材料に1350度の高温で焼成するのが特徴です。磁器の焼成は、一般的に1250度程度。温度を100度上げると、固体から液体に変化する限界に達し、歪みやひずみ、キレが生じやすくなり、製品として出荷できなくなるものが増えてしまうからです。

その歪みまで計算したうえで、寸分の狂いなく美しい形に焼き上げる技術力を持つ深川製磁だからこそ、透き通るような「透白磁」の風合いや、「フカガワブルー」と呼ばれるクリアーで明るい青の染付などが可能になると言っても過言ではありません。さらに高温で焼切ることで、生地はより強くなり、軽く、ガラス状の釉薬も溶け切り汚れが落ちやすい高品質な磁器を精製します。

有田焼に革新を起こした創業者・深川忠次

創業者の深川忠次は「精巧さのない磁器は、決して工芸と呼ばない」と言い、完全分業で成り立ってきた有田焼の伝統から一歩踏み出し、成形・絵付・施釉・焼成などの工程ごとに熟練した職人を自社に集めました。その結果、原料から製造、販売まで一貫して見渡し、お客様に安心して使ってもらえるクオリティが創出できたのです。

10年ほど前から、世界の先端デザインが集結するミラノへ進出し、創業以来変わらぬ独自の伝統技術を革新することに挑むとともに、「磁器という素材の可能性」を追求し、価値ある深川ISMを世界へ発信しています。磁器は、器という機能をお届けするだけでなく、それを使うことで日常にどれほど多くのハッピーを届けられるかが勝負。世界のファンの皆様の要望に応えられるだけのセンスと技術を、深川製磁は磨き続けています。

深川製磁デザイナーの深川惠以子さん

深川製磁の本質を教えてくれたお客様

深川製磁の本質を教えてくれたお客様

そういえば、私が深川製磁のデザイナーをやっていて本当に良かったと、感動した経験があります。それは1995年1月17日に起きた「阪神・淡路大震災」の年。あの日から半年も経たない5月の有田陶器市に、自宅が被災して、大切な食器類がほとんど割れてしまったお客様も多く訪れました。

あれほどの大災害でも、当社の器だけは無事だったとか。そして一様に「食べ物を載せるだけなら、紙皿だって構わないはず。でも、何もない中で、美しい深川製磁の器を使えることがどれほど心の支えになったことか。そのような状況下でも、お気に入りの器がそばにあるのはこんなにも素晴らしいことだったのですね」とおっしゃいました。その言葉は、作り手にとって宝物。あのとき、「私たちはこれからも、お客様に寄り添い、愛される磁器をつくり続けよう」とあらためて心に誓いました。

※ご紹介した器の価格は2014年5月現在のもので、すべて税込となります。